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すごくたまーに書いている
ボディガードマスタング×経済学者エドワード
の続き。
過去ログは、コレ





正月三が日も過ぎ、人々が日常の生活を取り戻した頃、我々は神社にいた。
これこそ、正月を終えて目に見えて平穏を取り戻した場所のひとつであろう。
快晴の午後二時。数日前ならば、前に進むこともできないほどに混み合っていたに違いない境内は広々と歩くことができる平日の顔をしていた。

「へー、正月過ぎれば全然人がいないのかと思ったら、わりといるじゃん」
「一応まだ冬休みですからね。教授も同じご身分でしょう」
「学生の論文を読むのに忙殺される冬休みなんて大学教授には必要ねえんだよ」

うんざりした顔でそう言うと、エドワードは寒いのかコートのポケットに両手を突っ込んで小さく身震いをした。
正月三が日を過ぎた平日にのんびりと初詣。これだけ聞くとなんとも平穏で優雅な日常を送っているように聞こえるが、同行しているのがボディガードという時点で平穏でも優雅でも何でもない。
結局、教授に対する脅迫犯は捕まらないままに年を越えてしまった。
学生が提出した卒業論文を読んで、その論文に対する質問を考えなくてはいけないと言って、大量の論文に埋もれていた正月。
やっと一段落ついたところで、彼から言われたのは『お前、初詣に行ったか?』という一言だった。
初詣も何も、年越しから正月までずっと護衛をしていたじゃないですか。と返すと、コートを投げられてそのまま外へと連れ出された。
自分から行こうと言っておいて、どこに神社があるかも知らない教授のために新年初めてカーナビを使った。
神社についてからも、自分からなかなか動こうとしない教授を先導する形で初詣は始まった。この人の気まぐれは今に始まったことではないが、無理矢理連れ出しておいて、やる気のない態度を見せられると雇い主とはいえ文句のひとつも言いたくなってくる。
子供相手だ、と、ぐっと堪え、賽銭箱の前まで連れて行った。本来なら、先に教授にしてもらうところだが、未だに二歩後ろに構えている彼を引っ張り出す気にもなれなかったので鈴を鳴らし、賽銭を投げ入れた。
その様子を見た教授は、ゆるゆると前進すると同じように参拝し、まっすぐと前を見つめたまま手を合わせていた。

「オレ、これが初詣だ」
「初詣なのは私も同じですが」
「ちっげーよ!人生、初詣!」

一瞬、何を言っているのかわからなくて静止した後、言葉の意味を理解した瞬間に誰にも聞こえないくらいのボリュームで、小さくまぬけな声を出してしまった。
日本の神様を前に、何という失態だろう。

「今まで、神社に来たことないんですか?」
「だってオレ、子供のころから日本にほとんどいなかったし。日本に来てからは、そんなもの行きたいと思いもしなかったし」
平然とそう言うが、日本の平均的な家庭で生まれ育った自分には理解しがたい話だった。大人になってからはともかく、子供のころの私は、初詣はもちろんだが七五三だの、地域の祭りだの神社に出かける機会は多かったように思う。
彼が帰国子女の天才経済学者で、日本のありがちな文化が彼にとっては非凡なことであるのだと今更実感した。
そして、自分から初詣に誘っておいて、自分から動こうともせずに私の後ろについて回ってきたのも頷ける。彼は、初詣が何をするのか知らなかったのか。

「それならそうともっと早く言ってくだされば」
「やだよ!だっせーだろ!!」
何が、と思ったが、言葉にするのはやめた。
人生初詣の相手に選ばれたのが自分だという事実に気付くと、何だか急に気恥ずかしい気持ちになった。
そういうことだろう。今まで一度も初詣に行ったことがないから連れて行って、は、言われた私の方も妙も意識してしまう。

参拝を終えると、一通り神社で売っているものの説明をした。おみくじ、絵馬、お守り、どれも興味なさそうにしていてこの人らしいな、と思う。
「じゃあ、お守り買う」
そう言って、お守り売り場に行くと大量のお守りと睨めっこを始めた。
こんなにも多種多様なお守りが存在しているとは思わなかったのだろう、ずらりと並んだお守りを見た瞬間に彼の眼が大きく見開いたのを見逃さなかった。
お守りを見回して、一つを選び出して購入したかと思うとそのままお守りが入った袋を目の前に突き出してきた。
「何ですか?」
「やるよ。優しいオレからのプレゼント」
「何のお守りです?」
「よくわかんねえ。開けて見てみれば?」
そう言われ、目の前で袋から取り出してみると、そこには『必勝祈願』と書かれていた。
「大事に、します…」
「おー。アレだ、胸ポケットにいれとけば、銃弾から守ってくれるんじゃね?」
どこまで本気で、どこまで冗談で言っているのだろう。
そして、私に何に打ち勝てと言うのだろう。強いて言うならば、今目の前にいる自由奔放な雇い主くらいだ。
これで仕事は終えたと、エドワードは車に戻り始めた。
ものの10分で終わった初詣だ。彼の本当の意味での初詣がこれでよかったのか不安がよぎる。
「もう少し早い時期に来れば屋台も出ていて賑わっていたのですが」
「別にいいって。初詣がどんなものかもわからないオレにしてみれば十分だよ」
行きとは反対に、エドワードの背中を追いかける形になる。十分な初詣をさせられなかったと気遣っている自分に対して、教授は気遣っているようだ。
迷信めいたものに一切興味のなさそうな彼がわざわざお守りを買って渡してきたのも、そういう気持ちがあったのだろう。

「ありがとう。連れて来てくれて」

背向けたまま言われる。
どんな顔をして言っているのか。
もし、面と向かって言われていたならば、反射的に『どうしてそんなに可愛いんですか』くらい口走っていたかもしれない。

「教授」
「おう?」
振り返った彼の表情はいつもと同じだった。ただ、何を言われるのか、という緊張感は隠せてはいないけれど。
「さっき、お願い事したんでしょう?何をお願いしたんです」
「ああ。身長が伸びますように、って…まあオレはまだ成長期だから願う必要もないけど、保険としてな!そこらへん勘違いするなよ!」
脅迫犯に付け狙われている人間のする願い事か、と内心苦笑した。ただ、納得の願いごとである。

「で、お前は?」
当然返ってきた同じ質問。遠隔操作のキーで車の鍵を開錠し、エスコートするように助手席の扉を開いて、微笑んで見せた。

「人に言うと叶わなくなるそうなので、秘密です」

二、三回、口をパクパクさせた後、流れるように文句を言い出した教授を助手席に押し込めて車を走らせた。
帰路、ずっと隣から聞こえてくる雑音も仔犬か何かが一生懸命吠えているのだと思えば可愛いものだ。
神様へお願いすれば叶うと信じているほど純粋ではもうないけれど、この願いごとは神様以外の人間に聞かれたくはないな、と思う。

『気まぐれでもわがままでも何でもいいから、この人が楽しそうにしてくれますように』

脅迫犯に狙われている人間のボディガードがする願いごとでは、ないのだろう。




end.



たまに書きたくなるなる。
きっと、私の中のロイエドで一番書きやすいんだろうね。
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すげーくだらない小話。






日差しが弱まり、秋が深まるのを日に日に肌で感じる頃。
私の用意する、エドワードへの餌付けの種類も変化していた。
夏の暑い全盛期はシャーベットやソルベ、残暑のころにはアイスクリームやジェラート、そして今の季節、やっとケーキのお出ましである。
値段やボリュームから言っても、エドワードがケーキを喜んで食べることは知っている。
だが、暑い時期は何よりも身体を冷やすことを優先したいらしく冷たい食べ物を優先して用意していた。
夏に入る前に立ち寄ったのが最後のケーキ屋に数ヶ月ぶりに入り、ショーケースの中から適当なケーキを二つ選ぶ。
最初に目についた、リンゴのムースの周りをカラメルでコーティングしたケーキと、ミルフィーユを選んだが、買った後に両方ともエドワードには綺麗に食べることが難しいものだと気付きはっとした。
まあ、久々のケーキの食べにくさに悪戦苦闘し、結果開き直るエドワードもそれはそれで、なんて想像してゆるむ口元を手で隠しつつ司令部へと戻った。

司令部に戻ると、ちょうどいいタイミングでエドワードが来ていた。
執務室のソファに、足を広げ腕を組み、まるで重役のように居座っている。
久しぶりのケーキだよ、と目の前に白いケーキ箱を置いてやる。


「…いらん」


おお!ケーキ!久々だなあ!でかした大佐!!
というリアリティのある返答を期待していた私には、少々突き刺さる言葉が返ってきた。
しかし、これくらいは想像の範囲内である。
今まで何度、彼の気分によって不条理に八つ当たりをされてきたかを考えればこれくらい可愛いものだ。

「後で食べるか?」
「いらん」
「まだケーキよりアイスがよかったか?」
「両方いらん」
「腹でも壊してるのか?」
「オレがそんなヤワなわけねえだろ!!」


噛み付くようなことを言いながら、物言いたげにチラチラと私の方を見てくる。
機嫌が悪くて八つ当たりをしているようではなさそうだし、ただ単純に腹が減っていないというわけでもなさそうだ。
どうしたものかとケーキとエドワードを交互に眺めていると、上目で私の身体を凝視しながらエドワードがぼそりと呟く。


「だって、甘いもの食べ過ぎると、大佐みたいにメタボになるって…」


え?と思い、エドワードを見ると思い切り視線を逸らされた。

「オレも食べないから!大佐も食べないようにしような!一緒に頑張ろう!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!誰が私をメタボだって…」
「皆、皆、言ってたよ!今日もうきうきとケーキを買いに行ったって!オレがいないストレスを甘いものにぶつけてるって!!」


普段、私から見ても子供にしては大変男らしいエドワードが、思いつめたように目を固くつむり、興奮のあまり顔を蒸気させて、小さく震えている。
私がいない間に着いたエドワードを、部下連中でよってかかってからかったのだろうが、どうしてこんなにも深刻に受け止めてしまったのだろうか、この子は。

「鋼の」
「なんだよ」
「私がメタボじゃないことは君が一番よくわかっているだろう?」
「……ちゃんと意識して見たことねえよ、大佐の身体なんて……」


その後、誤解を解くために執務室の中で軍服を捲りあげ腹筋を披露した上で、腹筋の強度をチェックするということで腹にグーでパンチを食らった。
彼の想像の中で、私の身体はどれだけだらしないことになっていたのかと思うと、それだけで頭の奥が鈍く痛んだ。

腹を殴られ、精神的にも落ち込んだ私の代わりにエドワードはケーキを二つ食べて帰っていった。



end.





end.じゃねーよ。何だこれ。

涼しくなってきて、夏はあんまり欲しくなかったケーキが美味しい季節になりましたね。
大佐はエドワードくんの身体を舐め回すように見ているけど、エドワードくんはそんな余裕ねえよ!ってことで
大佐の身体のこと、まだあんまりよく知らなかったら可愛いです。あ、そういうことになってまだ2ヶ月くらいの設定でね!
何言ってんだ私。
唐突に大昔に書いた
ボディガードマスタング×大学教授エドワード
の続き。

過去ログはコレ





今回引き受けたボディガードの仕事内容は、主に外出時の警護である。
17歳にして、経済学の大学教授と政府顧問を務める天才少年は、その才能故に作ってしまった敵から脅迫を受けている。
脅迫犯から彼を守るべく派遣され、朝10時に迎えに来い、という言いつけを厳守し彼の家に着いたのが今から2時間前のことである。
冷房のよく効いた広い部屋の隅にあるソファに腰掛け、エドワード教授の著書と本人を交互に眺めて2時間である。
10時に呼びつけた本人は今、パソコンに向かって必死に何かを打ち込んでいる。
今日は大学の定期試験の問題の提出締め切りらしい。
彼の予定では昨日のうちにテスト問題を仕上げ、朝すぐに提出し帰ってくるつもりだったそうだが、人生そうはうまくいかなかったようだ。

何で教授のオレが!試験前に苦しまなきゃいけないんだよ!!と、幾度となくぼやきが聞こえてきた。
テストは計画性を持って早めに取り組まないといけませんよ、と毎回言いかけては口をつぐむのだった。



「お前さあ、夏って好き?」

唐突に降ってきた質問に、すぐさま本から著者に目を移すと、本人は本当に話しかけたのか?と疑問に思うほど
視線をパソコン画面に固定させたまま、手を動かしていた。

「私は暑いのがあまり得意ではないので。教授は夏はお好きなのですか?」
「わかんねえ!オレは暑いのも寒いのも苦手じゃないから、何を基準に季節を好きって言うのかが理解できん」

複数の授業を持っている彼は、授業内容に合わせた複数の異なるテスト問題を作らねばならず、今取り組んでいるのが最後の一つだと言っていた。
つまり、最後の最後で煮詰まって気晴らしに話しかけているのだろう。
彼の表情は2時間前と比べてもわかるほど、どんよりと曇っている。

「夏が好きという人間はよく聞きますが、夏の風物詩と呼ばれるものが好きな者が多いのではないでしょうか」
「何それ、祭りとか花火とかキャンプとかそういうイベントってことか?そんなもんオレには関係ないんだよ!」
言うと同時に、ダン!と強くエンターキーを押す音が鈍く響いた。

「イベントもあって、夏は開放的になる、とか言うけどさ、オレは息が詰まるっつーの……」

普段から強気な態度ばかり見せる彼の語尾に溜め息が混じる。
毎日のように脅迫の文章が届き、いつ誰にどこから見られているかもわからず、身を守るために自由に外出もできない。
そして、男のボディガードがつきっきり。それは息も詰まることだろう。
額を、組んだ手の甲に乗せ、完全に筆が止まってしまったところを確認してソファから立ち上がり部屋の隅に置かれた小さな冷蔵庫へと向かう。



「派手なことじゃなくても、小さなところから夏の楽しみを見つけるのもいいんじゃないですか?」

彼の机の上に、小さなカップとプラスチックのスプーンをひとつ置いた。
カップの中には、淵は濃い緑色をしたシャーベット、中央部分は薄い黄緑をしたジェラートでできたアイスが入っている。

「マスクメロン味ですよ。嫌いですか?」
「お前、これいつの間に…」
「今日、ここに伺う際に持ってきました。勝手に冷凍庫を拝借してすみませんでした」

項垂れていた頭を上げ、椅子にもたれ掛かる形になると、アイスをすくったスプーンを口へと運ぶ。
スプーンを口から離すと、ハァ、と大きな溜め息が漏れた。


「暑い時の休憩に冷たいものを食べると、少し元気が出る気がしませんか」
「あー…。お前、いくつか買ってきたんだろ?もうすぐ終わるから、それまで食べて待ってろよ」
「わかりました。ありがとうございます」

お言葉に甘えて、自分の分のアイスを取り出しているとパソコンの画面を睨みながら黙々とアイスを口に運ぶ彼の姿が見えた。
その後、私がアイスを食べ終わるには、彼は最後に怒涛のラストスパートで仕上げたテスト問題を意気揚々とプリントアウトしていた。






「だからさ、オレにしてみれば論文書くより法律作るより何よりテスト問題作りが面倒くさいんだよ!!」

大学にテスト問題を提出した帰りの車の中、助手席で彼は普段の調子を取り戻していた。
椅子に深く腰掛け、手と足を組み、いかにもオレは偉いです!という格好を取っている。
「簡単にしても、難しくしても、勉強した意味がなかった!って学生に言われて、教務の連中から遠回しに注意されるんだよ…知るか!」
「私が学生のころは、問題は一文のみで後は学生に論述させるものが多かったですが」
「論述はテスト問題作るのは楽だけど、学生の知ったか解答を長々と読むのがだるくてやめた」

横から強い風を感じて視線をずらすと、せっかく冷房を入れているというのに窓を全開にし外を眺めている彼が映った。
車の中だというのに、長い金髪が風にたなびいている。
よく冷えた車内の空気と、蒸し暑い屋外の空気が混じり合い、生ぬるい世界が生み出されていく。

「オレは経済学の教授なんてやってるけど、結局一般人として世間知らずなんだろうな。夏が好きか嫌いかも自分じゃ判断できん」

髪が顔にかかった状態になりながら、身体は外に向けたまま顔のみを運転席に移し、笑った。



「でも、お前がくれた夏の楽しみは、好きだよ」


彼が少しでも喜んでくれれば、と思い1つ210円のアイスを買って彼の家に向かった。
結局のところ、一番喜んでいるのは、自分なのかもしれない。
嫌いだった夏が、少し好きになってしまいそうなくらいに、だ。




end.


何で突然ボディガードと大学教授を書いたって
パロディの元となったbass○先生の漫画を昨日読み返したから。それだけです。
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