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唐突に大昔に書いた
ボディガードマスタング×大学教授エドワード
の続き。

過去ログはコレ





今回引き受けたボディガードの仕事内容は、主に外出時の警護である。
17歳にして、経済学の大学教授と政府顧問を務める天才少年は、その才能故に作ってしまった敵から脅迫を受けている。
脅迫犯から彼を守るべく派遣され、朝10時に迎えに来い、という言いつけを厳守し彼の家に着いたのが今から2時間前のことである。
冷房のよく効いた広い部屋の隅にあるソファに腰掛け、エドワード教授の著書と本人を交互に眺めて2時間である。
10時に呼びつけた本人は今、パソコンに向かって必死に何かを打ち込んでいる。
今日は大学の定期試験の問題の提出締め切りらしい。
彼の予定では昨日のうちにテスト問題を仕上げ、朝すぐに提出し帰ってくるつもりだったそうだが、人生そうはうまくいかなかったようだ。

何で教授のオレが!試験前に苦しまなきゃいけないんだよ!!と、幾度となくぼやきが聞こえてきた。
テストは計画性を持って早めに取り組まないといけませんよ、と毎回言いかけては口をつぐむのだった。



「お前さあ、夏って好き?」

唐突に降ってきた質問に、すぐさま本から著者に目を移すと、本人は本当に話しかけたのか?と疑問に思うほど
視線をパソコン画面に固定させたまま、手を動かしていた。

「私は暑いのがあまり得意ではないので。教授は夏はお好きなのですか?」
「わかんねえ!オレは暑いのも寒いのも苦手じゃないから、何を基準に季節を好きって言うのかが理解できん」

複数の授業を持っている彼は、授業内容に合わせた複数の異なるテスト問題を作らねばならず、今取り組んでいるのが最後の一つだと言っていた。
つまり、最後の最後で煮詰まって気晴らしに話しかけているのだろう。
彼の表情は2時間前と比べてもわかるほど、どんよりと曇っている。

「夏が好きという人間はよく聞きますが、夏の風物詩と呼ばれるものが好きな者が多いのではないでしょうか」
「何それ、祭りとか花火とかキャンプとかそういうイベントってことか?そんなもんオレには関係ないんだよ!」
言うと同時に、ダン!と強くエンターキーを押す音が鈍く響いた。

「イベントもあって、夏は開放的になる、とか言うけどさ、オレは息が詰まるっつーの……」

普段から強気な態度ばかり見せる彼の語尾に溜め息が混じる。
毎日のように脅迫の文章が届き、いつ誰にどこから見られているかもわからず、身を守るために自由に外出もできない。
そして、男のボディガードがつきっきり。それは息も詰まることだろう。
額を、組んだ手の甲に乗せ、完全に筆が止まってしまったところを確認してソファから立ち上がり部屋の隅に置かれた小さな冷蔵庫へと向かう。



「派手なことじゃなくても、小さなところから夏の楽しみを見つけるのもいいんじゃないですか?」

彼の机の上に、小さなカップとプラスチックのスプーンをひとつ置いた。
カップの中には、淵は濃い緑色をしたシャーベット、中央部分は薄い黄緑をしたジェラートでできたアイスが入っている。

「マスクメロン味ですよ。嫌いですか?」
「お前、これいつの間に…」
「今日、ここに伺う際に持ってきました。勝手に冷凍庫を拝借してすみませんでした」

項垂れていた頭を上げ、椅子にもたれ掛かる形になると、アイスをすくったスプーンを口へと運ぶ。
スプーンを口から離すと、ハァ、と大きな溜め息が漏れた。


「暑い時の休憩に冷たいものを食べると、少し元気が出る気がしませんか」
「あー…。お前、いくつか買ってきたんだろ?もうすぐ終わるから、それまで食べて待ってろよ」
「わかりました。ありがとうございます」

お言葉に甘えて、自分の分のアイスを取り出しているとパソコンの画面を睨みながら黙々とアイスを口に運ぶ彼の姿が見えた。
その後、私がアイスを食べ終わるには、彼は最後に怒涛のラストスパートで仕上げたテスト問題を意気揚々とプリントアウトしていた。






「だからさ、オレにしてみれば論文書くより法律作るより何よりテスト問題作りが面倒くさいんだよ!!」

大学にテスト問題を提出した帰りの車の中、助手席で彼は普段の調子を取り戻していた。
椅子に深く腰掛け、手と足を組み、いかにもオレは偉いです!という格好を取っている。
「簡単にしても、難しくしても、勉強した意味がなかった!って学生に言われて、教務の連中から遠回しに注意されるんだよ…知るか!」
「私が学生のころは、問題は一文のみで後は学生に論述させるものが多かったですが」
「論述はテスト問題作るのは楽だけど、学生の知ったか解答を長々と読むのがだるくてやめた」

横から強い風を感じて視線をずらすと、せっかく冷房を入れているというのに窓を全開にし外を眺めている彼が映った。
車の中だというのに、長い金髪が風にたなびいている。
よく冷えた車内の空気と、蒸し暑い屋外の空気が混じり合い、生ぬるい世界が生み出されていく。

「オレは経済学の教授なんてやってるけど、結局一般人として世間知らずなんだろうな。夏が好きか嫌いかも自分じゃ判断できん」

髪が顔にかかった状態になりながら、身体は外に向けたまま顔のみを運転席に移し、笑った。



「でも、お前がくれた夏の楽しみは、好きだよ」


彼が少しでも喜んでくれれば、と思い1つ210円のアイスを買って彼の家に向かった。
結局のところ、一番喜んでいるのは、自分なのかもしれない。
嫌いだった夏が、少し好きになってしまいそうなくらいに、だ。




end.


何で突然ボディガードと大学教授を書いたって
パロディの元となったbass○先生の漫画を昨日読み返したから。それだけです。
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挑発に乗れよ
ありがとう超癒されました。教授エドワード可愛い。にやにやしちゃう。萌え。
オノナツメ(basso)さんはいいですよね。私も大好きです。
冴子 2008/07/18(Fri)22:02:58 編集
>>さえちゃん
さえちゃんの名前で挑発に乗れよ、のタイトルを見た時はもう何ていうか、乗ります…!!!ってなりました。気持ち悪くてごめんなさい。
わあーい!さえちゃんににやにやしてもらえたら私もにやにやしちゃう。ありがとう!
オノナツメさんの作品はまだ少ししか知らないのですが、いいですね。
こんな恋をしてほしい(ロイエドに)と思います。
村雨 2008/07/19(Sat)00:00:50 編集
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